PMS(月経前症候群)とは
PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)は、月経開始の3〜10日前から現れ、月経開始とともに消失する心身のさまざまな不調のことです。月経のある女性の約7〜8割がなんらかのPMS症状を経験し、そのうち日常生活に支障をきたす中等症以上は約5〜15%と報告されています。
PMSは「気のせい」や「我慢すべきもの」ではなく、ホルモン変動による医学的な症状です。適切な治療で改善が期待できます。

PMS・PMDD・月経困難症の違い
| 病態 | 特徴 | 主な治療 |
|---|---|---|
| PMS | 月経前3〜10日の心身の不調(症状は多彩) | 漢方薬、鎮痛薬、SSRI |
| PMDD(月経前不快気分障害) | PMSの中でも精神症状が特に重く、日常に深刻な支障 | SSRI(間欠投与)が第一選択 |
| 月経困難症 | 月経中の強い下腹部痛・腰痛(月経前ではなく月経中) | 鎮痛薬、低用量ピル(婦人科) |
※ 同じ月経関連の不調でも、症状が出るタイミングと内容で治療アプローチが変わります。
症状が起こる仕組み
排卵後から月経開始直前までの期間(黄体期)に、プロゲステロン(黄体ホルモン)が急激に変動することで、セロトニン・GABAなど脳内神経伝達物質のバランスが乱れ、心身の症状が引き起こされると考えられています。月経が始まるとホルモンが下がり症状が消失するのが特徴です。
PMSの主な症状
PMSの症状は200種類以上あると言われ、ひとりひとり異なります。大きく分けて精神症状・身体症状・行動の変化に分類されます。
精神症状
- イライラ・怒りっぽくなる
- 気分の落ち込み・涙もろさ
- 不安・緊張感・焦燥感
- 集中力の低下・判断力の低下
- やる気が出ない・何もしたくない
身体症状
- 頭痛(片頭痛が悪化することも)
- 下腹部痛・腰痛・関節痛
- 乳房の張り・痛み
- むくみ(体重増加 1〜2kg)
- 倦怠感・疲れやすさ
- 肌荒れ・ニキビ・便秘・下痢
- 眠気または不眠
- 食欲の変化(過食または食欲不振)・甘い物への渇望
行動面の変化
- ささいなことで家族や同僚と衝突する
- 仕事や学業のパフォーマンスが落ちる
- 外出が億劫になる、人と会いたくなくなる
PMSと似た症状を起こす疾患(鑑別が重要)
PMSの症状は多彩なため、別の身体疾患が背景にあるケースも珍しくありません。内科の視点で以下の疾患を除外することが重要です。
| 疾患 | PMSと似る症状 | 確認する検査 |
|---|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | 倦怠感・頭痛・集中力低下 | 血算、フェリチン |
| 甲状腺機能異常 | イライラ・動悸・むくみ・抑うつ | TSH、FT3、FT4 |
| うつ病 | 抑うつ気分・意欲低下(月経と無関係に続く) | 問診、症状日記 |
| 片頭痛 | 周期的な頭痛 | 問診(月経関連性の確認) |
| 機能性低血糖 | 空腹時のイライラ・震え・動悸 | HbA1c、血糖検査 |
| ビタミンD欠乏 | 倦怠感・気分の落ち込み | 25-OH ビタミンD |
こんなときは一度ご相談を
セルフケアで対処しきれない症状は早めに
PMSは適切な治療で大きく症状が改善することが多い疾患です。「毎月のことだから」と諦めず、お気軽にご相談ください。
- 毎月の症状で仕事・学業・家事に支障が出ている
- 家族やパートナーとの関係に影響が出ている
- 月経前になると強い抑うつ・絶望感・希死念慮が出る(PMDDの可能性)
- 市販薬では痛みや症状がコントロールできない
- 月経周期と無関係に症状が続く(別の疾患の可能性)
- 月経量が異常に多い・長い(貧血合併の可能性)
- 30代後半以降で症状が悪化してきた
当院での診察・検査
問診のポイント
以下を整理して受診いただくと診断がスムーズです。可能であれば2〜3か月分の症状記録(アプリのスクリーンショットでも可)をお持ちください。
- 症状の内容と強さ
- 症状が始まる時期(月経何日前から)
- 症状が消失するタイミング
- 日常生活・仕事への影響度
- 月経周期の規則性、月経量
- 現在服用中の薬・サプリメント
血液検査で確認する項目
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 血算・フェリチン | 貧血・鉄欠乏の有無(月経量が多い方は特に重要) |
| 甲状腺機能(TSH・FT4) | バセドウ病・橋本病の除外 |
| ビタミンD・B12 | 欠乏による倦怠感・気分症状の除外 |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病・低血糖症状の除外 |
| 肝・腎機能 | 薬物療法の安全性評価 |
治療の選択肢
当院では症状のタイプと重症度に合わせて、複数の治療選択肢を組み合わせてご提案します。
漢方薬(第一選択になることが多い)
| 処方名 | 向いている症状・体質 |
|---|---|
| 加味逍遙散(かみしょうようさん) | イライラ・不眠・冷え・のぼせ |
| 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | のぼせ・下腹部痛・肩こり(瘀血体質) |
| 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 冷え・むくみ・倦怠感(虚弱体質) |
| 抑肝散(よくかんさん) | イライラ・怒りっぽい・不眠 |
| 女神散(にょしんさん) | のぼせ・めまい・不安(更年期様症状) |
漢方薬は1〜2周期(1〜2か月)で効果を実感される方が多く、2〜3か月の継続で評価します。副作用は比較的少なく、長期使用が可能です。
SSRI(PMDD・強い精神症状に有効)
精神症状が特に強い場合(PMDD)にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効果的です。
- 代表薬: エスシタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン等
- PMSに対しては間欠投与(黄体期投与)が可能:排卵後〜月経開始までの約2週間のみ服用
- うつ病治療とは異なり効果発現が早い(数日〜1週間)
- 毎日の連続投与も選択肢(精神症状が月経周期と関係なく続く場合)
鎮痛薬・対症療法
- 頭痛・腹痛: NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン)
- むくみ: 当帰芍薬散などの漢方薬、食塩・カフェインの制限
- 不眠: 睡眠リズム整備、必要に応じ短期の睡眠薬
低用量ピル(OC/LEP)について
低用量ピルをご希望の場合
低用量ピルはPMS・PMDD・月経困難症に非常に効果的ですが、処方には婦人科での診察(問診・血圧測定・内診または超音波)が推奨されます。ご希望があれば婦人科をご紹介します。当院でも併診は可能です。
日常生活でのセルフケア
食生活
- カフェインを控える(頭痛・不安の悪化要因)
- アルコールを控える(気分の不安定さを助長)
- 塩分を控えめに(むくみ対策)
- 血糖値を安定させる食事(精製糖・白米の過剰摂取を避ける)
- マグネシウム・ビタミンB6を含む食品(ナッツ・バナナ・緑黄色野菜)
- 大豆イソフラボン(味噌・豆腐・納豆)
運動・休養
- 有酸素運動(週3回以上・1回20〜30分):セロトニン分泌促進
- 質の良い睡眠(7時間前後)
- ストレスマネジメント(ヨガ・瞑想・マインドフルネス)
症状記録の習慣
月経周期と症状を記録することで自分のパターンを把握でき、薬の調整にも役立ちます。スマートフォンの月経管理アプリが便利です。
当院でのPMS診療の特徴
- 内科医による身体疾患を含めた総合的な評価
- 漢方薬・SSRI・鎮痛薬を組み合わせた個別化治療
- 貧血・甲状腺・ビタミンなど背景疾患の血液検査にも対応
- SSRIの間欠投与にも対応(PMDDに有効)
- 低用量ピルが必要な場合は婦人科をご紹介
- 予約なし・当日受診OK/毎日9〜21時診療/十条駅徒歩1分
はじめて受診される方へ
「受診するほどの症状か分からない」と迷われる方は少なくありません。PMSは毎月続く症状だからこそ、早めの対処で生活の質が大きく改善します。まずはお気軽にご相談ください。





