四十肩・五十肩とは
四十肩・五十肩は、医学的には肩関節周囲炎(Frozen Shoulder)と呼ばれ、40〜60代に多い、肩関節の痛みと可動域制限を特徴とする疾患です。正式な年齢による区別はなく、発症した年代で「四十肩」「五十肩」と呼ばれているだけで、病態は同じです。
明確な原因がないことが多く、肩関節を包む関節包に炎症が生じて拘縮(こうしゅく)を起こします。自然に治癒することもありますが、症状が強いと1〜3年持続することがあり、適切な治療と段階的なリハビリで回復を早められます。
「放置しても治る」は半分正解、半分誤解
多くは自然経過で改善しますが、治療しないと可動域制限が残ることがあります。特に凍結期の過度な安静は拘縮を悪化させ、適度な運動と疼痛管理が回復を早めます。

四十肩・五十肩は何科を受診すればいい?
肩関節の痛みは整形外科が専門です。当院は内科として、痛みの治療(消炎鎮痛薬・外用薬)や、糖尿病・甲状腺・リウマチ性多発筋痛症といった背景疾患の評価、自宅でできるリハビリの指導を行います。関節内注射・MRI・専門的なリハビリが必要な場合は、整形外科へご紹介します。
病期(3段階)の経過
| 病期 | 期間 | 特徴 | 治療の重点 |
|---|---|---|---|
| 炎症期(Freezing) | 2〜9か月 | 強い痛み・夜間痛・可動域の縮小が進行 | 疼痛コントロール |
| 凍結期(Frozen) | 4〜12か月 | 痛みは軽減、しかし可動域制限が顕著 | 段階的リハビリ |
| 解凍期(Thawing) | 6〜24か月 | 徐々に可動域が回復 | 機能回復訓練 |
全経過で1〜3年かかることも
典型的な経過は合計1〜3年です。多くは自然に軽快しますが、途中の間違った対処(長期安静・無理な運動)で治癒が遅れることもあります。
症状の特徴
痛みの特徴
- 徐々に始まる肩の痛み(明らかな外傷なし)
- 夜間痛・寝返りで起こる痛み
- 肩の特定の動作で鋭い痛み
- 動かすと悪化、安静で軽減
- 腕を上げると肩〜上腕に放散
可動域制限
- 髪を結うのが難しい(結髪動作)
- 背中に手が回らない(結帯動作)
- 棚の高い物が取れない(挙上制限)
- エプロンの紐が結べない
- 腕を横に広げられない(外転制限)
- 腕を後ろに回せない(内旋制限)
他覚的所見
- 肩関節の可動域制限(他動でも制限)
- 三角筋・棘上筋の筋力低下(廃用性)
- 肩甲骨周囲筋の緊張
四十肩・五十肩と似た症状の疾患(鑑別が重要)
肩の痛みは他の疾患でも起こります。正しい診断で適切な治療を選べます。
| 疾患 | 四十肩との違い |
|---|---|
| 腱板断裂 | 外傷・加齢、特定動作で痛み、他動可動域は比較的保たれる |
| 石灰沈着性腱板炎 | 急激な激痛で発症、レントゲンで石灰沈着 |
| 頸椎症性神経根症 | 首の動きで悪化、腕・手のしびれ |
| 胸郭出口症候群 | 腕を挙上する動作で腕のしびれ・痛み |
| 狭心症(放散痛) | 労作時に悪化、左肩〜顎への広範囲の痛み |
| リウマチ性多発筋痛症 | 50歳以上、両肩・腰のこわばり、CRP上昇 |
| 関節リウマチ | 多関節痛、朝のこわばり1時間以上 |
| 変形性肩関節症 | 高齢者、レントゲンで関節変形 |
リスク要因
- 40〜60歳
- 女性(男性の2〜4倍)
- 糖尿病(2〜4倍のリスク、難治化しやすい)
- 甲状腺機能の異常
- 長期の肩関節の不動(骨折・術後等)
- 脳卒中後の片麻痺
- パーキンソン病
- 心筋梗塞後
- デスクワーク・猫背姿勢
診察・検査
問診
- 発症時期・きっかけ・進行の経過
- 痛みの性質・夜間痛の有無
- 日常生活での困りごと
- 既往歴(糖尿病・甲状腺・脳卒中等)
- これまでの治療歴
診察・検査
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 肩関節可動域検査 | 自動・他動での挙上・外旋・内旋の評価 |
| 筋力検査 | 腱板損傷の有無 |
| インピンジメント徴候 | 腱板の挟み込みの評価 |
| レントゲン | 石灰沈着・変形性関節症の除外 |
| 血液検査 | 糖尿病・甲状腺・CRPの評価 |
| MRI・超音波 | 腱板断裂の鑑別(整形外科へ紹介) |
治療の選択肢
薬物治療(疼痛管理)
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs):炎症・痛みに
- アセトアミノフェン:NSAIDsが使いにくい方に
- 外用薬(ゲル・湿布)
- 慢性疼痛に用いる内服薬
- 強い痛みには弱オピオイドを、医師が必要と判断した場合に検討
関節内注射
| 薬剤 | 目的・特徴 |
|---|---|
| ステロイド+局所麻酔 | 強い炎症・夜間痛に効果的(回数・間隔は医師が管理) |
| ヒアルロン酸 | 関節の動きを滑らかにする目的で用いられる |
関節内注射は整形外科へご紹介
超音波ガイド下での確実な注射や、関節内への注入が必要な場合は、整形外科の専門医療機関へご紹介します。当院ではまず保存療法(薬物・生活指導)で経過を見ます。
リハビリテーション
病期に応じた段階的なリハビリが最も重要な治療です。自宅でできる運動の指導も行います。
| 病期 | 運動の原則 |
|---|---|
| 炎症期(痛みが強い時期) | 痛みを誘発しない範囲で振り子運動・軽いストレッチ |
| 凍結期 | 可動域を広げる訓練を、無理のない範囲で徐々に |
| 解凍期 | 積極的な可動域訓練・筋力訓練 |
自宅でできる運動
- 振り子運動:前かがみで腕を脱力させ、大きく小さく円を描く
- 壁伝い運動:壁に手を置き、指を歩かせるように上へ
- タオル運動:タオルの両端を持ち、背中で上下に動かす
- テーブルストレッチ:テーブルに手を置き、上体を下げて肩を伸ばす
- コッドマン体操:痛みのない範囲で腕をぶらぶら揺らす
痛みを我慢せず、無理せず
リハビリで少し伸ばす感じ・軽い痛みは許容範囲ですが、鋭い痛み・夜間痛が増す運動は控えるべきです。無理をすると炎症が悪化し、回復が遅れます。
糖尿病との深い関係
糖尿病の方は四十肩・五十肩を2〜4倍発症しやすく、また難治化しやすい傾向があります。血糖コントロールと並行した治療が重要です。
- 両側性・慢性化しやすい
- 可動域制限が強くなりやすい
- HbA1cの改善が治療効果につながる
- 当院の内科部門で血糖コントロールもあわせて管理できます
日常生活のポイント
睡眠時
- 痛い肩を下にしない
- 仰向けで、痛い側の腕の下にクッションを入れる
- 横向きなら反対側を下にし、患側の腕を前に置いてクッションを
日常動作の工夫
- 重い荷物は反対の腕で持つ
- エプロンは前で結んでから後ろへ回す
- 着替えは痛い方の腕から通す
- 肩かけバッグより手提げ・リュック
- 長時間同じ姿勢を避ける(デスクワーク)
- 適度なストレッチを1日に複数回
温熱・冷却の使い分け
- 急性期・夜間痛の時期:冷却で炎症を抑えるのも選択肢
- 慢性期・拘縮期:入浴・蒸しタオル・ホットパックで血行促進
- 運動前に温めるとストレッチがしやすい
こんな症状はご相談を
- 肩の痛みが2〜3週間以上続く
- 夜間痛で眠れない
- 髪を結ぶ・背中に手が回らないなど日常動作に支障
- 糖尿病・甲状腺疾患がある
- 外傷後の強い肩の痛み(腱板断裂を疑う)
- 首・腕・手のしびれを伴う
- 両肩の痛みとこわばりがある(リウマチ性多発筋痛症も)
- 市販薬・湿布で効果がない
整形外科への紹介が必要なケース
- 強い可動域制限で日常生活への支障が大きい
- ステロイド関節内注射での改善が期待される
- MRIで腱板断裂の疑い
- 麻酔下徒手授動術や手術の検討
- 長期の保存療法でも改善しない
当院の四十肩・五十肩診療の特徴
- 内科として糖尿病・甲状腺機能・リウマチ性多発筋痛症の血液検査評価
- 消炎鎮痛薬・アセトアミノフェン・外用薬などの疼痛管理
- 自宅でできる振り子運動・ストレッチの指導
- 糖尿病合併例は血糖コントロールとあわせた管理
- 関節内注射・MRI・専門的リハビリは整形外科へご紹介
- 腱板断裂・頸椎症など他疾患の鑑別
- 予約なし・当日受診OK/十条駅徒歩1分
よくあるご質問
焦らず、諦めず、継続を
四十肩・五十肩は1〜3年の長い経過をたどる疾患です。自然軽快する病気ですが、適切な治療・リハビリを継続することで、痛みの期間を短くし、後遺症を最小限にできます。気になる肩の痛みがあればお気軽にご相談ください。





