湿疹・皮膚炎は皮膚に炎症が起きた状態の総称で、かゆみ・赤み・水疱・皮むけなどさまざまな症状を呈します。一口に「湿疹」といっても原因と治療法はまったく異なり、正確な診断が治療の第一歩です。
放置したりステロイドを自己流で中断したりすると慢性化し、治療期間が長くなります。当院では内科・皮フ科併設のため、全身の状態も踏まえて総合的に診察します。
見た目が似ていても治療はまったく違う
アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎・脂漏性皮膚炎・貨幣状湿疹・汗疱などは、見た目が似ていても原因も治療もそれぞれ異なります。自己判断で市販薬を使うと悪化することがあります。

主な湿疹・皮膚炎の種類
アトピー性皮膚炎
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 左右対称・屈側に多い・慢性経過(6か月以上) |
| 背景 | バリア機能低下+免疫の過剰反応 |
| 好発部位 | 肘の内側・膝の裏・首・顔 |
| 治療 | 保湿+ステロイド外用、タクロリムス、JAK阻害外用(コレクチム)、PDE4阻害外用(モイゼルト)、重症例はデュピクセント等 |
接触性皮膚炎(かぶれ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 原因物質に触れた部位だけに発症・境界明瞭 |
| 原因 | 金属・化粧品・毛染め・植物・洗剤・ゴム・絆創膏 |
| タイプ | 刺激性(誰でも発症)/アレルギー性(感作が必要) |
| 治療 | 原因物質の除去+ステロイド外用、難治例はパッチテスト |
脂漏性皮膚炎
- 皮脂腺の多い部位(頭皮・眉・鼻横・胸・背中)
- 赤みと黄色いフケ状の鱗屑
- マラセチアという常在真菌の関与
- ストレス・疲労で悪化
- 治療:抗真菌外用薬(ケトコナゾール)+弱めのステロイド
貨幣状湿疹
- コイン状(直径数cm)の強いかゆみを伴う湿疹
- 特に下肢に多い、乾燥肌の方に多い
- 治療:保湿+ステロイド外用、慢性化しやすい
皮脂欠乏性湿疹(乾皮症)
- 加齢・乾燥による皮膚バリア低下
- 下腿・腰部に多い、冬季に悪化
- 粉を吹いたような皮むけ
- 治療:保湿剤中心+かゆみ強いときはステロイド
汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹
- 手のひら・指側面・足裏に小さな水疱
- 春〜夏に悪化、ストレス関連
- 治療:ステロイド外用+保湿、難治例にはアルミニウム外用
乾癬(かんせん)
- 銀白色の厚い鱗屑を伴う赤い皮疹
- 頭皮・肘・膝・腰部に好発
- 爪の変形・関節炎を合併することも
- 治療:ビタミンD3外用、ステロイド、光線療法、重症例は生物学的製剤(専門機関紹介)
湿疹・皮膚炎の鑑別ポイント
| 特徴 | 疑う疾患 |
|---|---|
| 強いかゆみ・左右対称・屈側 | アトピー性皮膚炎 |
| 境界明瞭・触れた部位のみ | 接触皮膚炎(かぶれ) |
| 頭皮・鼻横・黄色鱗屑 | 脂漏性皮膚炎 |
| コイン状の湿疹・下肢 | 貨幣状湿疹 |
| 手足の水疱 | 汗疱 |
| 銀白色の厚い鱗屑 | 乾癬 |
| 環状の赤み・中心治癒 | 白癬(KOH検査必要) |
| 夜間のかゆみ・指間の線状皮疹 | 疥癬 |
| 膨疹・24時間以内に消える | じんましん |
ステロイド外用薬の正しい使い方
5段階のランク
| ランク | 代表 | 主な用途 |
|---|---|---|
| I. 最強(Strongest) | デルモベート | 手のひら・足の裏・頑固な湿疹 |
| II. 非常に強い | アンテベート・マイザー | 体幹・四肢の重症湿疹 |
| III. 強い | リンデロンV・ボアラ | 体幹・四肢の一般湿疹 |
| IV. 中等度 | ロコイド・アルメタ | 顔・子ども・デリケート部位 |
| V. 弱い | キンダベート | 乳児・非常に軽い症状 |
FTU(フィンガーチップユニット)で適量を
人差し指の先から第一関節までチューブから押し出した量(約0.5g)が、大人の手のひら2枚分に塗る量の目安です。「薄く塗る」のはNG。必要量を塗らないと治りが遅く、結果的に使用期間が長くなります。
ステロイドの副作用とその実際
- 局所的副作用:皮膚萎縮・毛細血管拡張・ニキビ誘発・色素脱失(長期使用時)
- 全身性副作用:通常の外用量ではほぼ起こらない
- 顔・陰部は副作用が出やすいため弱いランクを使用
- ステロイド内服とは副作用の頻度・重症度が大きく異なる
「ステロイドは怖い」という誤解
正しく使えばステロイド外用薬は非常に安全で効果的な薬です。「悪化したらサッと強めを使って短期間で治す」のが鉄則。怖がって中途半端に使うと、かえって長期使用になるという逆説が起こります。
タクロリムス軟膏・新規外用薬
ステロイドが使いにくい顔・首や、ステロイドの副作用を避けたい場合の選択肢も増えています。
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| タクロリムス軟膏(プロトピック) | 免疫抑制・顔の湿疹に、長期使用可能 |
| デルゴシチニブ軟膏(コレクチム) | JAK阻害剤、2歳以上のアトピー性皮膚炎に |
| ジファミラスト軟膏(モイゼルト) | PDE4阻害剤、ステロイド副作用を避けたい場合 |
重症アトピー性皮膚炎の新規治療
従来の外用治療で改善しない中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対して、全身療法の選択肢が大幅に増えました。
| 薬剤 | 投与 | 特徴 |
|---|---|---|
| デュピルマブ(デュピクセント) | 皮下注射(2週毎) | IL-4/13阻害、12歳以上 |
| トラロキヌマブ(アドトラーザ) | 皮下注射 | IL-13阻害 |
| ウパダシチニブ(リンヴォック) | 内服(JAK阻害) | 12歳以上、強力 |
| バリシチニブ(オルミエント) | 内服(JAK阻害) | 15歳以上 |
| アブロシチニブ(サイバインコ) | 内服(JAK阻害) | 12歳以上 |
※ これらの治療は専門機関との連携のもと、適応や副作用管理を行います。
保湿剤(スキンケアの基本)
保湿は湿疹治療の最も重要な基本です。炎症が治まっても継続することで再発を防げます。
| 保湿剤 | 特徴 |
|---|---|
| ヘパリン類似物質(ヒルドイド) | 保湿+血流改善、ローション/クリーム/軟膏 |
| ワセリン(プロペト・白色ワセリン) | 油性・バリア形成、刺激が少ない |
| 尿素クリーム(ケラチナミン等) | 角質保湿、ひび割れ・硬いかかと |
| セラミド配合市販品 | バリア機能修復、アトピー素因の方に |
保湿剤の正しい使い方
- 入浴後3分以内に塗る(ゴールデンタイム)
- 1日2回以上(朝・夜)
- たっぷり塗る(保湿剤はケチらない)
- ステロイド外用後に重ねてOK(時間差は必要なし)
- 炎症部位を避けず全体に塗る
子どもの湿疹|乳児湿疹・おむつかぶれ・アトピー
「生まれて2か月、顔じゅうがブツブツに」「おむつの部分が赤いまま治らない」「これは乳児湿疹なのか、アトピーなのか」——赤ちゃんや小さなお子さんの湿疹は、保護者の方が最も判断に迷う症状です。
子どもの皮膚は大人よりも薄く、皮脂やうるおいを保つ力が未熟なため、ちょっとした刺激で炎症を起こします。一方で、正しくケアと治療をすれば大人よりも反応がよく、きれいに治ることが多いのも子どもの皮膚の特徴です。「そのうち治る」と待つより、早めに整えてあげたほうが結果的に短く済みます。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の見分け方
「乳児湿疹」は特定の病名ではなく、赤ちゃんの時期に出る湿疹をまとめた呼び方です。この中にアトピー性皮膚炎が含まれていることもあり、はじめの時点では区別がつかないことも少なくありません。
| 項目 | いわゆる乳児湿疹(新生児ざ瘡・脂漏性湿疹) | アトピー性皮膚炎 |
|---|---|---|
| 出やすい時期 | 生後2週〜3か月ごろ | 生後2〜3か月以降に目立ってくることが多い |
| 出る場所 | 頭・眉・おでこ・頬など皮脂の多い部分 | 頬・首・耳のつけ根、その後は肘の内側・膝の裏など |
| 見た目 | 赤いブツブツ、黄色いかさぶた状のフケ | カサカサとジュクジュクを行き来する。左右対称 |
| かゆみ | 強くないことが多い | かゆがる。機嫌が悪い、こすりつける |
| 経過 | スキンケアと治療で数週間で落ち着くことが多い | 良くなっては繰り返すのを一定期間続ける |
診断のポイントは「繰り返すかどうか」です。そのため、初回の受診で「アトピーです」と断定できないことがあります。まずは治療とスキンケアを始め、経過をみながら判断していくのが一般的な流れです。「はっきりしないまま様子を見られている」と感じる場合も、それが不適切なのではなく、時間が診断の材料になるためとお考えください。
おむつかぶれと、似ているけれど違うもの
おむつの部分の赤みは、多くが尿や便の刺激・蒸れ・こすれによる刺激性の皮膚炎です。おむつをこまめに替え、おしりふきでこすらず、ぬるま湯で流して押さえ拭きにするだけでも改善します。
ただし、次のような場合は別の原因を考えます。市販のおむつかぶれ用の薬を続けても治らないときは、一度ご相談ください。
- 皮膚のしわの奥まで赤い、赤みの周りに小さなブツブツが散らばっている → カビ(カンジダ)による皮膚炎の可能性があります。この場合、通常のおむつかぶれの薬では悪化します
- ジュクジュクしてかさぶたが増えていく → とびひの可能性
- おむつの当たらない部分にも湿疹が広がっている → 湿疹・アトピーの可能性
赤ちゃんのスキンケア|洗い方と保湿の実際
薬を出すだけでは湿疹はよくなりません。毎日のスキンケアが治療の半分を占めます。とはいえ「保湿してください」と言われても、量やタイミングが分からないという声をよくいただくので、具体的にお伝えします。
洗い方
- 石けんは手のひらでしっかり泡立ててから、泡で包むように洗います。ガーゼやタオルでこすらないでください
- 首・脇・足のつけ根・耳の後ろなど、しわの奥は汚れがたまりやすい場所です。指を入れて広げて洗います
- お湯はぬるめ(38〜40℃)。熱いお湯は必要な皮脂まで落とします
- 石けんのすすぎ残しは湿疹の原因になります。しっかり流してください
- 頭の黄色いかさぶたは、入浴前にワセリンなどでふやかしてから洗うと無理なく取れます。爪でこすり取らないでください
保湿
- お風呂上がりすぐ(できれば5分以内)に塗ります。乾いてからでは効果が落ちます
- 量の目安は「塗った部分がテカって、ティッシュが軽くくっつく程度」。薄く伸ばすのでは足りません
- すり込まず、手のひらで押さえるようにのせる
- 1日2回以上。乾燥する季節は回数を増やしてください
- 湿疹のある部分も避けずに保湿します(薬を塗った上から重ねて構いません)
子どもへのステロイド外用薬
「赤ちゃんにステロイドを塗るのが怖い」というご相談は非常に多くいただきます。結論としては、医師が年齢と部位に合わせて選んだ薬を、指示された期間しっかり使う分には安全です。顔・首・おむつの中には弱いランクを使い、体や手足とは使い分けます。
むしろ困るのは、心配のあまり少量しか塗らない、すぐにやめてしまうケースです。炎症が残ったままになるため治りきらず、結果としてだらだらと長く使い続けることになります。塗る量・やめ方も含めて診察時にご説明しますので、不安な点はそのままお伝えください。
食物アレルギーとの関係
「湿疹が出るのは食べ物のせいでは」と考えて、自己判断で除去食を始める方がいらっしゃいますが、これはおすすめできません。乳児の湿疹すべてに食物アレルギーが関わっているわけではなく、必要のない除去は成長期の栄養面でかえってリスクになります。
また、湿疹があるからといって離乳食の開始を遅らせることは、現在は推奨されていません。むしろ湿疹を早く治して皮膚のバリアを保つことが大切だと考えられています。食物アレルギーの関与が疑われる場合は、検査を行い、医師の指導のもとで計画的に進めます。すでにアレルギーが判明している場合はその指示を優先してください。
いつまで続くのか
多くのお子さんは、成長とともに皮膚のバリア機能が育ち、症状が軽くなっていきます。アトピー性皮膚炎であっても、適切な治療を続けることで症状がほとんどない状態を保てるようになる方が大半です。
大切なのは、掻き壊して跡を残さないことと、皮膚の状態が良い時期をできるだけ長く保つことです。「体質だから仕方ない」と諦める必要はありません。
こんなときは受診してください
- 市販薬を1〜2週間使っても改善しない、かえって広がった
- ジュクジュクした部分やかさぶたが日ごとに増えている
- かゆがって夜眠れない日が続いている
- 顔の湿疹に市販薬を使うことに不安がある
- おむつの赤みが、しわの奥まで広がっている
- 湿疹に加えて熱がある、ぐったりしている
かゆみへの具体的な対処法(夜の過ごし方・掻き壊しの防ぎ方・保育園への登園の目安など)は、肌のかゆみのページで詳しくご説明しています。
当院は土日祝も診療しており、予約なしでも受診いただけます。ベビーカーのままお入りいただけますので、平日に受診しづらいご家庭もお気軽にお越しください。
こんな症状はご相談を
- 湿疹が2週間以上改善しない
- 市販薬でかえって悪化している
- 広範囲の赤み・水疱・びらん
- 強いかゆみで眠れない・仕事に支障
- 顔に湿疹があり市販薬を使いたくない
- 繰り返すじんましん・かゆみ
- 子どものアトピーの治療方針を相談したい
- ステロイドの使い方が不安
当院での診察・検査
問診・視診
- いつから・どの部位から発症したか
- 生活環境の変化(新しい化粧品・洗剤・衣類・ペット)
- 食事・ストレス・季節との関連
- 既往歴・家族歴(アトピー・喘息・花粉症)
- 服用中の薬・サプリ
検査
- 血液検査(TARC=アトピーの重症度指標、総IgE、好酸球)
- アレルギー検査(View39・特異的IgE)
- KOH直接鏡検(白癬の除外)
- 細菌培養(二次感染時)
- パッチテスト(接触性皮膚炎の原因特定:専門機関紹介)
日常生活でのポイント
スキンケアの基本
- 洗いすぎない(1日1回の入浴、優しく洗う)
- ぬるめ(38〜40℃)の短時間入浴
- 低刺激の石けん・ボディソープを選ぶ
- タオルでこすらず、優しく押さえて水気を取る
- 入浴後すぐに保湿剤をたっぷり
- 爪を短く、掻きむしり防止
衣類・環境
- 綿・シルクなど肌にやさしい素材
- ウール・化繊の直接接触を避ける
- 柔軟剤の過剰使用は避ける
- 室内湿度50〜60%を維持
- 清潔を保つ(寝具・タオル)
生活習慣
- 十分な睡眠(ストレス・免疫調整)
- バランスの良い食事
- ストレス管理
- アルコール・刺激物を控えめに
当院の湿疹・皮膚炎診療の特徴
- アトピー・接触皮膚炎・脂漏性皮膚炎など幅広く対応
- ステロイド外用薬をランク・部位を考慮して適切に処方
- タクロリムス・デルゴシチニブ・ジファミラストなど新規外用薬にも対応
- 重症アトピーはデュピクセント・JAK阻害薬治療可能機関へ紹介
- アレルギー検査(View39・特異的IgE)で原因特定
- 保湿剤の選択とスキンケアの指導
- 内科併設で全身疾患の関与もチェック可能
- 予約なし・当日受診OK/毎日9時から診療/十条駅徒歩1分
慢性化させる前に受診を
湿疹は早期に適切な治療を始めれば短期間で治せる病気です。「どうせ繰り返す」と諦めず、正しい治療で寛解を目指しましょう。





