ニキビ(尋常性痤瘡/しんじょうせいざそう)は、毛穴の皮脂詰まり・アクネ菌の増殖・炎症によって生じる慢性の皮膚疾患です。思春期だけの問題ではなく、20代以降の「大人ニキビ」も半数以上の女性が経験するといわれる、ごくありふれた病気です。
「そのうち治る」と放置するとニキビ跡(瘢痕・色素沈着)が残り、その治療はニキビ本体の治療より難しいため、早期の介入が重要です。現代のニキビ治療は大きく進歩し、適切な外用・内服で多くの方がきれいな肌を取り戻せます。
自己流のスキンケア・市販薬には限界があります
洗顔のしすぎ・保湿不足・効果の不十分な市販薬で悪化させてしまうケースが多くあります。医療機関での処方薬(アダパレン・過酸化ベンゾイル等)は市販薬よりも遥かに効果が高く、保険適用で利用できます。

ニキビができるメカニズム
ニキビは以下の4つの要素が重なって発生します:
- 皮脂の過剰分泌(ホルモン・ストレス・遺伝)
- 毛穴の詰まり(角化異常で毛穴が塞がる)
- アクネ菌の増殖(皮脂を栄養に嫌気的環境で増殖)
- 炎症(アクネ菌に対する免疫反応)
ニキビの種類と進行段階
| 段階 | 名称 | 見た目 | 炎症 |
|---|---|---|---|
| 1 | マイクロコメド(微小面皰) | 目に見えない初期段階 | なし |
| 2 | 白ニキビ(閉鎖面皰) | 白〜皮膚色のポツッとした小丘疹 | なし |
| 3 | 黒ニキビ(開放面皰) | 中央が黒く毛穴が開いている | なし |
| 4 | 赤ニキビ(丘疹) | 赤く盛り上がり、痛みを伴う | あり |
| 5 | 膿ニキビ(膿疱) | 先端に黄白色の膿を持つ | あり(強) |
| 6 | 嚢胞・結節 | 大きく深い赤い腫れ、瘢痕リスク高 | あり(深部) |
白ニキビ・黒ニキビの段階で治療を
治療のタイミングは炎症が起きる前の「コメド(白・黒ニキビ)」の段階がベスト。赤ニキビに進行すると跡が残るリスクが上がります。ポツポツが気になり始めた時点で受診をおすすめします。
ニキビの重症度分類
| 重症度 | 基準 | 主な治療 |
|---|---|---|
| 軽症 | 炎症性皮疹が片側の顔に5個以下 | 外用薬中心 |
| 中等症 | 炎症性皮疹が片側に6〜20個 | 外用+内服抗菌薬 |
| 重症 | 炎症性皮疹が片側に21〜50個 | 外用+内服+イソトレチノイン検討 |
| 最重症 | 嚢胞・結節を伴う、瘢痕形成中 | 専門機関紹介・イソトレチノイン |
大人ニキビの特徴・原因
20代以降の大人ニキビは、思春期ニキビとは異なる特徴があります。
- 顎・口周り・フェイスラインに多い(Uゾーン)
- 治りにくく繰り返しやすい
- 月経前に悪化する方が多い
- ストレス・睡眠不足・食生活の乱れで悪化
- ホルモンバランスが関与(PCOS・ストレス性)
大人ニキビの悪化要因
- ホルモンバランスの乱れ(月経・妊娠・ピル変更等)
- ストレス・睡眠不足
- 高GI食・乳製品の過剰摂取
- 化粧品・スキンケアの刺激
- 肌の乾燥(過度な洗顔・保湿不足)
- マスクによる蒸れ・摩擦(マスクネ)
- ステロイド・リチウム等の薬剤性
治療の選択肢
外用薬(毎日の基本治療)
| 薬剤 | 特徴・作用 |
|---|---|
| アダパレン(ディフェリン) | 毛穴の詰まりを解消するレチノイド、コメド段階から効果 |
| 過酸化ベンゾイル(ベピオ) | 殺菌・角質剥離作用、炎症ニキビに有効、耐性なし |
| アダパレン+過酸化ベンゾイル(エピデュオ) | 配合薬、両方の効果を1本で |
| 過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン(デュアック) | 炎症・殺菌+抗菌薬 |
| クリンダマイシン(ダラシンTゲル) | 抗菌薬外用、炎症性ニキビ |
| ナジフロキサシン(アクアチム) | 抗菌薬外用 |
| イオウ・サリチル酸系 | 軽症・補助的に |
アダパレン・過酸化ベンゾイルは初期に刺激感が出ることがあります
開始1〜2週間は赤み・皮むけ・乾燥感が出ることがあります。これは薬が効いているサインでもあり、多くは2週間程度で慣れて改善します。保湿を十分にしながら、夜1回の少量塗布から始めるのがコツです。
内服薬
| 薬剤 | 使用場面 |
|---|---|
| ビブラマイシン(ドキシサイクリン) | 中等症の炎症性ニキビ、2〜3か月間 |
| ミノマイシン(ミノサイクリン) | 代替的、色素沈着副作用に注意 |
| ロキシスロマイシン | マクロライド系、テトラサイクリン禁忌時 |
| トラネキサム酸 | 炎症後色素沈着の予防 |
| 漢方薬(十味敗毒湯・清上防風湯・桂枝茯苓丸) | 体質改善、補助的 |
| 低用量ピル(LEP/OC) | 月経関連の大人ニキビに有効 |
| イソトレチノイン(自費) | 重症・難治例に、専門機関紹介 |
抗菌薬内服は3か月を目安に
抗菌薬の長期使用は耐性菌のリスクがあるため、原則3か月以内での使用が推奨されています。外用薬(特に過酸化ベンゾイル)と組み合わせることで耐性化を抑えられます。
その他の治療
- 面皰圧出(保険適用外):大きな白・黒ニキビの内容物除去
- ケミカルピーリング(自費):グリコール酸等
- イオウカンフルローション
- ダーマローラー・フラクショナルレーザー(瘢痕治療・専門機関)
ニキビ跡への対応
ニキビ跡は大きく3タイプに分けられ、それぞれ治療アプローチが異なります。
| タイプ | 見た目 | 主な治療 |
|---|---|---|
| 炎症後色素沈着(PIH) | 茶色い跡、時間で改善 | トラネキサム酸内服、ハイドロキノン外用、日焼け止め、数か月〜1年で自然軽快 |
| 炎症後紅斑 | 赤い跡 | 数か月で自然軽快、日焼け止め、血管レーザー(専門機関) |
| 瘢痕(クレーター) | 凹凸、深い跡 | フラクショナルレーザー・ダーマローラー(専門機関・自費) |
瘢痕化を防ぐのが最大の予防
一度クレーター状の瘢痕になると治療が難しいため、ニキビ本体を早期に治療して瘢痕を作らないことが最大の予防です。赤ニキビの段階で治療を開始しましょう。
正しいスキンケアの基本
洗顔
- 1日2回(朝・夜)、泡立てネットでたっぷり泡立てて優しく洗う
- すすぎはぬるま湯で十分に
- ゴシゴシ擦らない・頻回洗顔しない(皮脂の過剰分泌を招く)
- 洗顔後はタオルで優しく押さえて水気を取る
保湿
- ニキビ肌でも保湿は必須(乾燥すると皮脂分泌が逆に増える)
- 油分が少なく水分が多いノンコメドジェニック製品
- セラミド・ヒアルロン酸配合のローション・乳液
- オイル系は毛穴を詰まらせることがあるため避ける
日焼け止め
- ニキビ治療中は特に紫外線で色素沈着が悪化するため必須
- ノンコメドジェニック・油分少なめの処方を選ぶ
- SPF30以上、PA++以上を毎日
メイク
- 可能な限りミネラルファンデーション・ノンコメドジェニック製品
- 帰宅後は早めにクレンジング
- メイク道具(ブラシ・スポンジ)を清潔に
生活習慣でのニキビ対策
食事
- 高GI食(白米・パン・砂糖)を控えめに
- 乳製品(特にスキムミルク)の過剰摂取を避ける
- 野菜・魚・大豆・発酵食品をバランスよく
- ビタミンB群・亜鉛・食物繊維を意識
- 水分を1日1.5L以上
「チョコレート=ニキビ」は誤解
チョコレートや揚げ物が直接ニキビの原因になるというエビデンスは確立されていません。むしろ高GI食(血糖を急上昇させる食品)のほうが関連性が高いとされます。極端な食事制限は不要ですが、精製糖・甘い飲料は控えめに。
生活習慣
- 睡眠7時間以上、23時までに就寝
- 適度な運動で代謝促進
- ストレス管理(ヨガ・深呼吸・趣味)
- 枕カバー・タオルをこまめに洗濯
- 髪が顔にかからないようにする
他の治療で改善しなかったニキビへ|内服レチノイド治療(イソトレチノイン)
「もう何年も治らない」「塗り薬も抗菌薬も試したのに、また同じところに出てくる」「治るそばから跡が増えていくのを見ているのがつらい」——ここまでの治療を尽くしても改善しない重症・難治性のニキビに対して、内服レチノイド(イソトレチノイン)という選択肢があります。
ただし、この薬は日本国内では承認されていない医薬品であり、妊娠に関わる重大な注意をはじめとして、必ず理解していただく必要のある事項が複数あります。以下を最後までお読みいただいたうえで、ご希望があれば診察でご相談ください。
どのような方が対象になるか
- 外用薬(アダパレン・過酸化ベンゾイル等)を十分な期間続けても改善しない
- 抗菌薬の内服を行っても、やめると再発を繰り返す
- 嚢胞や硬いしこりを伴う重症のニキビ
- すでに凹んだ跡(瘢痕)ができ始めている
逆に、まだ標準的な保険診療を十分に試していない場合は、まずそちらを行うことをおすすめします。保険診療で改善する方は多く、費用の負担もはるかに軽く済みます。
どのように効くのか
皮脂腺そのものを小さくして皮脂の分泌を大きく減らし、毛穴のつまりを改善し、結果としてアクネ菌が増えにくい環境をつくります。ニキビができる4つの要因のうち複数に同時に働きかけるため、他の治療で届かなかったケースにも効果が期待できます。ただし効果のあらわれ方には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
妊娠に関する注意
妊娠中の方は服用できません。この薬は胎児に重い先天異常を引き起こすことが確認されており、妊娠中・妊娠の可能性がある方への投与は絶対にできません。
- 服用を開始する前に、妊娠していないことの確認が必要です
- 服用中および服用終了後の一定期間は、確実な避妊が必要です
- 妊娠を希望される時期が近い方には処方できません
- 授乳中の方も服用できません
- 服用中および服用終了後の一定期間は献血ができません(輸血を受けた方が妊娠中の場合に影響するためです)
避妊が必要な具体的な期間は診察時に必ずご説明します。男性の方も含め、この点を理解いただけない場合は処方いたしません。
イソトレチノインの料金目安
- 20mg1ヶ月 9,900円
- 20mg3ヶ月 27,800円
- 20mg6ヶ月 54,000円
詳しくはこちらをご覧ください。料金表と本記事の価格が相違する場合は、料金表のページを正とします。
主なリスク・副作用
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| ほとんどの方に起こるもの | 唇の強い乾燥・ひび割れ、皮膚の乾燥と皮むけ、鼻の粘膜の乾燥による鼻血 |
| よくみられるもの | 目の乾燥(コンタクトレンズが使いにくくなることがあります)、筋肉痛・関節痛、頭痛、光線過敏(日焼けしやすくなります)、脱毛 |
| 検査で確認するもの | 肝機能の数値の上昇、中性脂肪・コレステロールの上昇 |
| 開始初期 | 飲み始めに一時的にニキビが悪化することがあります |
| 注意が必要なもの | 気分の落ち込み・情緒の変化が報告されています。気分の変化を感じたら、ためらわずすぐにご連絡ください |
服用できない方・注意が必要な方
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方・授乳中の方
- 肝機能に問題がある方、中性脂肪やコレステロールが高い方
- ビタミンAを含むサプリメントを摂取している方(併用できません)
- テトラサイクリン系の抗菌薬を服用中の方(併用できません)
- 過去にこの薬でアレルギーが出た方
服用中は脱毛・美容目的のレーザー施術やピーリング、ワックス脱毛も避けていただきます。
治療の進め方
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 診察・カウンセリング | これまでの治療歴を確認し、対象になるかを判断します。リスクと注意点を詳しくご説明します |
| 2. 血液検査 | 肝機能・脂質などを確認します。妊娠の可能性がある方は妊娠の確認も行います |
| 3. 開始 | 体重や症状に応じて医師が用量を決定します。少量から始めて調整することがあります |
| 4. 定期受診 | 1か月ごとを目安に受診し、経過の確認と定期的な血液検査を行います |
| 5. 終了・その後 | 一定期間の服用で終了します。終了後も避妊期間の遵守が必要です |
まずは診察をご予約ください
この治療は診察を受けずに開始することはできません。お薬だけをお求めいただくことも、初回からお渡しすることもできません。まず診察で、これまでの治療内容・体の状態・生活状況をうかがったうえで、適応があるかを一緒に判断します。
「そこまでの治療は必要ないかもしれない」という結論になることもあります。その場合は保険診療での治療をご提案しますので、ご自身が対象かどうか分からない段階でも、まずご相談ください。
診察のうえ処方が決まった方は、以下のページから事前のお支払いが可能です。
イソトレチノイン(内服)の詳細・事前決済ページ
悪化させないNG行動
やってはいけないこと
自己流の対処で悪化させてしまうケースが多くあります。以下は避けてください。
- ニキビを潰す(炎症拡大・瘢痕化)
- 爪で触る・いじる
- 1日に何度も洗顔する
- アルコール消毒液を顔に使う
- 濃いスクラブ・ピーリングの毎日使用
- 保湿を怠る
- 市販薬・サプリを何種類も試す
- ステロイド外用薬をニキビに塗る(悪化)
当院のニキビ診療の特徴
- 軽症〜中等症まで外用薬(アダパレン・過酸化ベンゾイル)中心の治療
- 中等症以上は抗菌薬内服+外用の併用で迅速に改善
- 月経関連の大人ニキビには低用量ピルの処方も可能
- 漢方薬を体質に応じて併用(十味敗毒湯・桂枝茯苓丸等)
- 色素沈着にはトラネキサム酸・日焼け止めの指導
- 重症・瘢痕化例は皮膚科専門機関(イソトレチノイン・レーザー治療)へご紹介
- スキンケアや生活習慣の指導も丁寧に
- 予約なし・当日受診OK/毎日9時から診療/十条駅徒歩1分
ニキビは治療で必ず改善します
ニキビは医学的に治療すべき皮膚疾患です。一人で悩まず、跡が残る前にご相談ください。早期治療で将来の肌トラブルを大きく減らせます。
未承認医薬品について
当院でニキビ治療に使用するイソトレチノインは、日本国内においてニキビ治療を目的として承認されていない医薬品です。
入手経路等
当院では、医師の判断のもと、海外の製造・販売元から適法な手続きを経て輸入した医薬品を使用しています。
国内の承認医薬品等の有無
国内には、ニキビ治療を目的として承認されている他の医薬品がありますが、イソトレチノインと同一成分でニキビ治療を目的として承認された医薬品はありません。
諸外国における安全性等に係る情報
イソトレチノインは、海外では重症ニキビの治療薬として使用されています。重大な副作用として、妊娠中の服用による胎児への重大な影響が知られているため、服用中および服用終了後の一定期間は妊娠を避ける必要があります。また、肝機能障害、脂質異常等の副作用が生じる可能性があります。
医薬品副作用被害救済制度について
国内未承認医薬品のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。





