うつ病とは
うつ病(Major Depressive Disorder)は、脳の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)のバランスの乱れにより、気分・思考・身体機能の広範囲に不調をきたす病気です。日本では生涯に15人に1人が罹患するとされる、ごくありふれた疾患です。
「気合いが足りない」「甘え」ではなく、治療が必要な医学的疾患です。適切な治療で多くの方が回復します。早期に治療を開始するほど回復が早く、再発予防の観点でも重要です。
当院の役割(内科として)
当院はうつ症状の原因となる身体疾患の除外と軽度〜中等度のうつに対する初期治療を担います。重度のうつ(自殺念慮が強い・機能障害が著しい)や治療抵抗性の場合は精神科へ適切にご紹介します。

うつ病の主な症状
以下の症状が2週間以上ほぼ毎日続く場合、うつ病の可能性があります(DSM-5診断基準参考)。
気分・意欲の症状
- 気分の落ち込み・悲しい気持ちが続く
- 何をしても楽しめない・興味が持てない(アンヘドニア)
- 自己否定感・罪悪感が強い
- 思考力・集中力・決断力の低下
- 希死念慮(死にたい気持ち)・自殺念慮
身体症状(見逃されやすい)
- 不眠(特に早朝覚醒)・または過眠
- 食欲低下・体重減少(まれに過食・体重増加)
- 強い倦怠感・疲れやすさ
- 原因不明の頭痛・肩こり・背部痛・胃腸不調
- 性欲の低下
- 動作・話し方が遅くなる(精神運動制止)
身体症状だけで受診される方も多い
うつ病の方の約7割は最初に身体症状(頭痛・倦怠感・胃腸不調)で内科を受診するといわれています。「原因不明の身体の不調が続く」場合、背景にうつ病が隠れていることがあります。
簡易セルフチェック(PHQ-9の一部)
過去2週間で以下の症状がどの程度ありましたか?1つでも「ほぼ毎日」が当てはまれば受診をおすすめします。
- 物事への興味や喜びを感じない
- 気分が沈む・憂うつ・絶望感
- 寝付けない・夜中に目が覚める・逆に眠り過ぎる
- 疲れた感じ・気力がない
- 食欲がない・または食べすぎる
- 自分はダメだ・家族に申し訳ないと感じる
- 集中力がない・決断できない
- 動きや話し方が遅くなった・逆に落ち着かない
- 死んだほうがましと考えたり、自分を傷つけたくなる
うつ症状を起こしうる身体疾患(鑑別が重要)
うつと似た症状(倦怠感・気分低下・集中力低下)は、身体疾患でも起こります。治療可能な身体疾患を見逃さないことが、当院の重要な役割です。
| 疾患 | うつと似る症状 | 確認する検査 |
|---|---|---|
| 甲状腺機能低下症(橋本病) | 倦怠感・抑うつ・体重増加・寒がり | TSH、FT4 |
| 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) | 不安・不眠・動悸・体重減少 | TSH、FT3、FT4 |
| 鉄欠乏性貧血 | 倦怠感・集中力低下・気分低下 | 血算、フェリチン |
| ビタミンB12・葉酸欠乏 | 抑うつ・認知低下・倦怠感 | 血中B12、葉酸 |
| ビタミンD欠乏 | 気分の不調・倦怠感・骨の痛み | 25-OH ビタミンD |
| 糖尿病・低血糖 | 倦怠感・集中力低下・易刺激性 | 血糖、HbA1c |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 日中の倦怠感・抑うつ・集中力低下 | 問診、必要に応じ検査 |
| 慢性疾患(腎・肝・心) | 倦怠感・意欲低下 | 肝腎機能、心電図 |
| 薬剤性 | 降圧薬・ステロイド等による抑うつ | 服薬歴の確認 |
すぐに受診が必要なサイン
以下の症状がある場合は早めにご相談を
放置すると症状の慢性化・重症化・自殺リスクにつながります。「このくらいで受診してよいのか」と迷う必要はありません。
- 2週間以上気分の落ち込みが続いている
- 仕事・家事・学業が以前のようにこなせない
- 眠れない、または眠りすぎて1日が短く感じる
- 食欲がなく体重が減っている(または過食傾向)
- 頭痛・倦怠感・胃腸症状が検査で異常なく続いている
- 以前楽しめていたことに興味が湧かない
- 自分を責める気持ちが強い
- 死にたい気持ちや自傷したい衝動がある
希死念慮・自殺念慮が強い場合は緊急です
「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが強い・具体的な計画がある場合は、精神科救急や「いのちの電話(0120-783-556)」、また早期の精神科専門医の受診をご検討ください。当院でも緊急性を評価のうえ、適切な医療機関をご紹介します。
当院での診察・検査
問診のポイント
- 症状の内容・期間・強さ
- 日常生活・仕事・人間関係への影響
- 睡眠・食欲・体重変化
- 希死念慮の有無と強さ
- ストレス要因(仕事・家庭・健康・喪失体験)
- 既往歴・家族歴(うつ・双極性障害)
- 現在服用中の薬剤・サプリ
- アルコール・カフェイン摂取量
身体疾患を除外する検査
| 検査項目 | 目的 |
|---|---|
| 血算・炎症反応 | 貧血・慢性炎症の評価 |
| 甲状腺機能(TSH・FT4) | 甲状腺疾患の除外 |
| フェリチン | 隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)の評価 |
| ビタミンD・B12・葉酸 | 栄養欠乏性の気分症状除外 |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病・低血糖の評価 |
| 肝・腎機能 | 慢性疾患の評価、薬物療法の安全性 |
| 心電図 | 薬物療法前のQT評価 |
治療の選択肢
症状の重症度・背景に応じて、薬物療法と生活調整・心理的アプローチを組み合わせます。
薬物療法
| 分類 | 代表的な薬 | 特徴 |
|---|---|---|
| SSRI(第一選択) | エスシタロプラム、セルトラリン等 | 副作用が比較的少なく、効果発現は2〜4週 |
| SNRI | デュロキセチン、ベンラファキシン等 | 身体の痛みを伴ううつにも有効 |
| NaSSA | ミルタザピン | 不眠・食欲不振に有効、眠気・体重増加に注意 |
| 漢方薬 | 加味逍遙散、香蘇散、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯等 | 軽症や身体症状中心の方に |
| 睡眠薬(短期) | レンボレキサント、スボレキサント等 | 不眠への対応、依存性の少ないものを選択 |
抗うつ薬について知っておくこと
抗うつ薬は効果発現まで2〜4週間かかることが多いです。開始直後は副作用(吐き気・眠気・頭痛等)が出ることがありますが、通常1〜2週間で軽減します。自己判断で突然中止せず、必ず主治医と相談しながら調整してください。
生活リズム・セルフケア
- 毎日決まった時刻に起床する(睡眠リズムの固定)
- 朝日を浴びる(体内時計・セロトニン分泌を整える)
- 無理のない範囲での軽い運動(散歩20〜30分)
- 栄養バランスの整った食事(トリプトファン・鉄・ビタミンD)
- アルコール・カフェインを控える
- 完璧主義を手放す(「60点でOK」)
- 信頼できる人に話す・つながりを絶たない
心理的アプローチ
- 認知行動療法(CBT):専門的な心理療法機関への紹介が可能
- マインドフルネス認知療法
- 問題解決療法
休職・診断書について
仕事を一旦離れる判断も治療の一部
症状が重く、就労継続が難しい場合、休養は立派な治療です。当院では必要に応じて休職のための診断書を発行しています。「休むことへの罪悪感」で悪化させないよう、早めにご相談ください。
休職までの流れ(当院の場合)
- 症状評価と休養の必要性を診察で判断
- 診断書を発行(通常1〜3か月の期間を記載)
- 2〜4週間ごとに通院し、治療効果と復職可否を評価
- 症状が安定したら段階的復職(リワーク・時短勤務)を検討
利用できる制度・サポート
- 傷病手当金:健康保険加入者が休職した場合、給与の約2/3が最長1年6か月支給
- 自立支援医療:通院医療費が原則1割負担
- 復職支援プログラム(リワーク)
- 地域の精神保健福祉センター相談
当院でのうつ診療の特徴
- 内科医による身体疾患の血液検査で原因を丁寧に除外
- 軽度〜中等度のうつに対する薬物治療(SSRI・SNRI・漢方薬)
- 不眠・倦怠感・胃腸症状など身体症状への並行対応
- 休職診断書の発行に対応
- 重症例・治療抵抗性の場合は精神科へ速やかに紹介
- すでに精神科通院中の方の身体面のフォローも歓迎
- 予約なし・当日受診OK/毎日9〜21時診療/十条駅徒歩1分
受診を迷っている方へ
「こんなことで内科に行っていいのか」「うつと言われるのが怖い」とためらう必要はありません。早期の相談が最も重要な治療の第一歩です。ご家族だけのご相談も受け付けています。





