「トイレが近い」「おしっこをするときにしみるように痛い」「排尿後もすっきりしない」「尿が濁っている・血が混じった」——これらは膀胱炎の典型的な症状です。膀胱炎は女性の約半数が生涯に一度は経験するといわれるほど身近な感染症ですが、放置すると腎盂腎炎という重い感染症に進行することがあります。当院では尿検査による当日診断・抗生物質処方に対応しています。
膀胱炎とは
膀胱炎は、細菌(約8割は大腸菌)が尿道から膀胱内に侵入・増殖することで、膀胱の粘膜に炎症が起こる感染症です。
女性は男性に比べて尿道が短く(女性約4cm・男性約20cm)、尿道口が肛門・腟に近いため、細菌が膀胱に到達しやすい構造になっています。このため膀胱炎の患者さんの大多数は女性です。20〜40代の性活動期の女性と、閉経後の女性に発症のピークがあります。
膀胱炎にはいくつかの種類があります。
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種類 |
特徴 |
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急性単純性膀胱炎 |
最も一般的。基礎疾患のない女性に突然起こる細菌感染 |
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複雑性膀胱炎 |
前立腺肥大・尿路結石・糖尿病・カテーテル使用など背景疾患がある場合。治りにくく再発しやすい |
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間質性膀胱炎 |
細菌感染ではなく膀胱粘膜の慢性炎症。頻尿・膀胱の痛みが長期間続く。抗生物質が効かない |
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出血性膀胱炎 |
血尿が目立つ膀胱炎。細菌性のほかウイルス性・薬剤性もある |
膀胱炎の症状——4大症状をチェック
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症状 |
詳細 |
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① 頻尿 |
トイレに行く回数が増える(1日8〜10回以上)。行ったばかりなのにまた行きたくなる |
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② 排尿時痛 |
おしっこの終わりごろに「しみる」「ツンとした」痛みが出るのが特徴 |
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③ 残尿感 |
排尿後もすっきりしない・まだ残っている感じがする |
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④ 尿の混濁・血尿 |
尿が白く濁る・赤〜ピンク色になる・血の塊が混じる |
このほか、下腹部(膀胱のあたり)の重い感じ・不快感・違和感を伴うことがあります。
⚠️ 38℃以上の発熱・腰や背中の痛み・吐き気がある場合は、細菌が腎臓まで達した「腎盂腎炎(じんうじんえん)」の可能性があります。腎盂腎炎は入院治療が必要になることもある重い感染症です。すぐに受診してください。
膀胱炎の原因——なぜなるのか
細菌の侵入経路
膀胱炎の原因菌の約8割は大腸菌です。肛門周囲に常在する大腸菌が尿道口から侵入し、膀胱まで上がって増殖します。通常は排尿によって細菌は洗い流されますが、以下の要因があると感染が成立しやすくなります。
膀胱炎になりやすい要因
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要因 |
理由 |
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トイレを我慢する |
膀胱内に尿が長時間とどまり細菌が増殖しやすくなる |
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水分不足 |
尿量が減り細菌を洗い流す力が低下する |
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疲労・ストレス・体の冷え |
免疫力が低下し感染防御力が落ちる |
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性行為 |
尿道口周囲の細菌が押し込まれやすい(ハネムーン膀胱炎) |
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生理・おりものシート |
長時間の使用で細菌が繁殖しやすい環境になる |
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ウォシュレットの過度な使用 |
腟の自浄作用を担う常在菌まで洗い流してしまう |
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閉経 |
女性ホルモン低下により腟・尿道の粘膜が萎縮し防御力が下がる |
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便秘 |
腸内の大腸菌が増え、肛門周囲の細菌量が増える |
膀胱炎の検査——尿検査で当日診断
膀胱炎の診断は尿検査で行います。当院では受診当日に結果をご説明できます。
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検査 |
内容 |
結果 |
|---|---|---|
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尿定性検査 |
試験紙で白血球・潜血・亜硝酸塩などを確認 |
数分で判定 |
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尿沈渣 |
顕微鏡で白血球・細菌・赤血球の数を確認 |
当日 |
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尿培養検査 |
原因菌の種類と有効な抗生物質を特定 |
3〜5日後(再発例・難治例に実施) |
繰り返す膀胱炎や治りにくい膀胱炎では、尿培養検査で原因菌と薬剤感受性(どの抗生物質が効くか)を調べることが重要です。
膀胱炎の治療
抗生物質の内服——3〜7日間
急性単純性膀胱炎の治療は抗生物質の内服です。通常、服用開始から2〜3日で症状が大きく改善します。
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ポイント |
内容 |
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主な薬剤 |
セフェム系・ペニシリン系・ニューキノロン系など。近年は耐性菌を考慮して選択 |
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服用期間 |
3〜7日間。症状が消えても処方分は飲み切ることが重要 |
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効果 |
服用開始2〜3日で頻尿・排尿時痛が改善することがほとんど |
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改善しない場合 |
耐性菌・別の疾患(間質性膀胱炎・膀胱がん等)の可能性。再受診を |
⚠️ 症状が良くなったからと自己判断で薬をやめると、細菌が生き残って再発したり、耐性菌(薬が効かない菌)を生む原因になります。必ず処方された分を飲み切ってください。
治療中のセルフケア
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水分を多めに摂る(1日1.5〜2L目安)——細菌を尿で洗い流す
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トイレを我慢しない——尿意を感じたらすぐに排尿する
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体を温める——下腹部・腰を冷やさない
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アルコール・カフェイン・刺激物を控える——膀胱粘膜への刺激を避ける
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性行為は症状が治るまで控える
膀胱炎は自然に治る?——放置のリスク
ごく軽い膀胱炎であれば、大量の水分摂取と排尿で自然に改善することもあります。しかし以下の理由から、症状がある場合は受診をおすすめします。
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腎盂腎炎への進行リスク——膀胱の細菌が腎臓まで上がると高熱・腰痛を伴う重い感染症になり、入院が必要になることもある
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症状の長期化——治りきらないまま慢性化・再発を繰り返すことがある
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別の病気が隠れている可能性——膀胱がん・尿路結石・間質性膀胱炎など、膀胱炎に似た症状の疾患がある
特に「血尿が続く」「抗生物質を飲んでも治らない」「発熱を伴う」場合は、膀胱炎以外の疾患の除外が必要です。必ず受診してください。
繰り返す膀胱炎(再発性膀胱炎)
年に3回以上、または半年に2回以上膀胱炎を繰り返す場合は「再発性膀胱炎」と呼ばれ、通常の治療に加えて対策が必要です。
再発を繰り返す場合に調べること
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尿培養検査による原因菌・薬剤感受性の確認
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残尿測定・エコー検査(尿路の構造異常・結石の有無)
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糖尿病など基礎疾患の有無(血液検査)
再発予防の生活習慣
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水分を1日1.5〜2L摂り、尿量を保つ
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トイレを我慢しない・排尿間隔を空けすぎない
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性行為後は早めに排尿する
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温水洗浄便座の使いすぎに注意(ビデの強洗浄を避ける)
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排便後は前から後ろへ拭く
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体を冷やさない・疲労をためない
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便秘を改善する
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閉経後の方はホルモン補充療法が有効な場合がある(婦人科と連携)
男性の膀胱炎——背景疾患の精査が必要
男性は尿道が長く膀胱炎になりにくいため、男性が膀胱炎を発症した場合は前立腺肥大症・前立腺炎・尿路結石・尿道狭窄などの背景疾患が隠れていることが多く、原因の精査が必要です。また男性の排尿時痛は膀胱炎より尿道炎(クラミジア・淋菌などの性感染症)であることも多いため、鑑別が重要です。





